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長野日野自動車杯 第32回パラアイスホッケー全国クラブ選手権大会

地元・長野サンダーバーズが大会6連覇を達成!

 パラアイスホッケーのクラブチーム日本一決める「長野日野自動車杯 第32回パラアイスホッケー全国クラブ選手権大会」が1月6日から2日間にわたり、長野市のビッグハットで開かれた。長野サンダーバーズ、東海アイスアークス、北海道ベアーズ、東京アイスバーンズの4チームがトーナメント戦で優勝を争い、決勝で東京アイスバーンズを3-2で破った長野サンダーバーズが優勝。大会6連覇を成し遂げた。

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「氷上の格闘技」と呼ばれる激しいスポーツ

 パラアイスホッケーは、膝下・両脚切断や下半身まひ、機能障害など、下肢に障害がある人のために、アイスホッケーのルールを一部変更して行うスポーツ。選手は「スレッジ」と呼ばれるスケートの刃を2枚つけた専用のそりに乗り、両手に短いスティックを1本ずつ持ちプレーする。スティックの片方の先端にはピックと呼ばれるギザギザの金属がついており、選手は漕ぐ動作で前進し、反対側のブレード部分でパックを操る。試合は15分3ピリオド制で、リンクやパックの大きさ、ゴールの位置、また氷上でプレーする選手の数(フォワード3人、ディフェンス2人、ゴールキーパー1人)などはアイスホッケーと同じ。ボディチェック(体当たり)も認められており、「氷上の格闘技」と呼ばれるほど激しいスポーツだ。

東京と長野が決勝に進出

 初日はトーナメントの1回戦が行われた。第一試合は、東海アイスアークス(以下、東海)と人数不足のため単独出場が叶わなかったロスパーダ関西(以下、関西)の選手が加わった東京アイスバーンズ(以下、東京)が対戦。2019年発足の東海は活気があるチームで、今大会は最多の13人の選手がエントリーした。東京は、監督を関西の青木栄広(あおきよしひろ)コーチが、キャプテンを東京の石川雄大(いしかわゆうだい)選手が務め、“東西連合チーム”をまとめた。
 試合は、東京が6-2で東海に勝利。東京は体調不良による欠場者が出たため、急遽フォワードの松下真大(まつしたまさひろ)選手がゴールキーパーとして出場。慣れないポジションながら、相手が放った13本のシュートのうち、11本をセーブしてチームを奮い立たせた。また、東京は昨年のカザフスタンで行われた2023 パラアイスホッケー世界選手権BプールでMVPを獲得した18歳の伊藤樹(いとういつき)選手が3ゴール、同じく日本代表の中村俊介(なかむらしゅんすけ)選手が2ゴールと存在感を示した。追いかける展開となった東海は、得点のチャンスを増やすため、試合終了の約1分前にはゴールキーパーをベンチに戻して6人攻撃を仕掛けるも及ばなかった。

スピードを活かし、先制点を含む3ゴールを挙げた東京の伊藤選手(右)

 第二試合は、大会5連覇中の”王者”長野サンダーバーズ(以下、長野)と北海道ベアーズ(以下、北海道)が対戦。北海道は他チームから2選手をレンタルしてチームを構成するものの、ベテランの須藤悟(すどうさとる)選手と三澤英司(みさわえいじ)選手、高校3年の森崎天夢(もりさきあむ)選手といった機動力のある選手がバランスよくそろう強豪だ。
 試合は、長野が6-1で北海道に勝利。長野はキャプテンの熊谷昌治(くまがいまさはる)選手の3得点や、チーム最年少の20歳の熊谷将吾(くまがいしょうご)選手のゴールなどで主導権を握った。北海道は第3ピリオドに守りから攻撃に一気に切り替えるトランジションでゴールに向かい、三澤選手が落ち着いてシュートを決めて1点を返したが、追いつくことはできなかった。

長野の熊谷(昌)選手(中央)はキャプテンとしてチームをけん引した

決勝は長野が接戦を制す! 3位は北海道

 決勝は、東京と長野が激突。第1ピリオドの7分6秒、長野はフェンス際の攻防から新津和良(にいつかずよし)選手がパックをキープして熊谷(昌)選手につなぎ、ゴール前に走りこんできた上原大祐(うえはらだいすけ)選手にパス。上原選手はディフェンスの3人を交わし、鮮やかにシュートを決めた。第2ピリオドは、長野が豊富な運動量を活かして、味方のペナルティによって選手が1人少ない状況でも得点に成功するなどして、3-0とリードを広げた。

 東京は追いかける展開のなかでも集中力をキープ。3失点目の直後に伊藤選手がゴールを決めると、第2ピリオド終了の17秒前には、相手陣地のフェンス際でパックを奪った伊藤選手からパスを受けた中村選手が強烈なシュートを放ち、ゴールネットを揺らした。第3ピリオドも積極的に得点を狙う東京。しかし、シュートがゴールポストに当たるなどして同点には至らず。長野も最後まで堅い守りを維持し、3-2で長野が勝利した。

 3ゴールと気を吐いた長野の上原選手は、「チームが勝利して嬉しい」と振り返りながらも、決勝はほかの選手の得点がなかったことに触れ、「ドリブルしてパックを運べる選手がまだ少ない。シュート力ももっとつけないと」と語り、東京の伊藤選手は「本当に悔しい。少ないチャンスで決め切る決定力が必要」と、それぞれに課題を口にした。


決勝前に握手を交わす長野の熊谷(昌)選手(右)と東京の石川選手

左指を怪我しながらも長野の上原選手は3得点と奮起した

東京は第2ピリオド終了間際に中村選手が追加点を挙げた

笑顔で写真におさまる長野の選手とスタッフ(写真提供:長野サンダーバーズ)

 決勝に先立ち行われた3位決定戦は、北海道が東海を2-0で退けた。第1ピリオドの10分13秒、北海道の須藤選手が放ったシュートは相手ゴールキーパーにブロックされるが、パックが前にこぼれたところをゴール前に詰めていた森崎選手がバックハンドで押し込み、先制点を決めた。第2ピリオドには三澤選手が追加点をマーク。守ってはゴールキーパーの廣瀬進(ひろせすすむ)選手が好セーブを連発し、完封勝利を果たした。


激しくパックを奪い合う北海道の森崎選手(左)と東海の鵜飼選手

女子選手や障害がない人も活躍

 パラアイスホッケーは男女混合競技だ。今大会は東海の藤原芽花(ふじわらめいか)選手、東京の鈴木(すずき)さくら選手の2人の女子選手が出場した。藤原選手は2022年4月に競技を始めたばかりだが、地道に練習を重ねて力をつけ、一昨年、昨年と女子選手による世界大会にも日本からただ一人出場した。国内に女子選手のロールモデルがいないことを課題に挙げ、体験会を企画するなど競技の普及活動にも力を入れる藤原選手は、「私が積極的に大会に出るなどして、後に続く女子選手が増えたらいい」と話した。

 また、日本国内で開催される大会への参加は、障害の有無に関係なく参加できることから、普段は関西でトレーナーを兼任している東京の香川智(かがわさとし)選手も決勝の第2ピリオドにゴールキーパーとして出場した。決勝で自身と交代する形で第1・3ピリオドのマスクを被った日本代表の堀江航(ほりえわたる)選手のプレーを間近で見て、「技術面はもちろん、チームメートへの声の指示など勉強になった」と振り返る。香川選手は「周囲の人は僕がパラスポーツをしていると言うと『えっ?』という反応をするけれど、障害の有無に関係なく誰がやってもいいと思っている。僕はチームに加わって、障害はその人の個性だと思うようになったし、スポーツはいろんな可能性を教えてくれることに気づいた。パラアイスホッケーも観ているだけではわからない魅力があるので、1%でも興味があるなら挑戦してみてほしい」と語り、競技人口の増加に期待していた。


力強いパフォーマンスを見せた東海の藤原選手

初の冠大会、長野の熊谷は「選手の想いに企業が応えてくれた」

 今大会は、長野の熊谷(昌)選手らが中心となり、日頃からチームをサポートする長野日野自動車に提案し、クラブ選手権で初めて協賛企業の社名を冠した大会の開催が実現した。長野日野自動車は大会運営費のほか、ベストプレーヤー賞の商品提供や横断幕作製、運営をサポートするボランティアの派遣などを支援した。また、長野チームはシュート体験チャレンジブースの設置や、実際に氷に乗るパラアイスホッケー体験会を企画し、日本パラアイスホッケー協会と協力して実施。2日間を通して、長野日野自動車社員やその家族、地元の観客ら多くの人が会場を訪れ、パラアイスホッケーを楽しんだ。

 熊谷(昌)選手は、「冬季パラリンピックが開かれた長野でもパラアイスホッケーの認知度はまだ低い。競技を盛り上げたいという私たちの想いに、企業が応えてくれた。多くの社員や観客にパラアイスホッケーを観てもらえて嬉しかったし、今回の御縁を大事にして、より一層応援してもらえるチームづくりをしていきたい」と、言葉に力を込めた。


会場内に設置されたシュート体験チャレンジブースも大いに盛り上がった

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(取材・文/MA SPORTS、撮影/植原義晴)