HOME大会・イベントレポート2023関東パラ陸上競技記録会

大会・イベントレポート詳細

2023関東パラ陸上競技記録会

新人からベテランまで自身の記録更新に挑戦!

 NPO関東パラ陸上競技協会が主催する「2023関東パラ陸上競技記録会」が9月23日、町田GIONスタジアム(町田市立陸上競技場)で開かれた。本大会は身体障害のほか、知的障害の選手も参加することができ、実施種目は100m、200m、400m、走幅跳、砲丸投、オープンチャレンジ50mで、トラック種目はすべて予選・決勝なしのタイムレースで行われた。競技を始めたばかりの選手や10代の若手選手からパラリンピアンまで、多くのアスリートがエントリーした。

メイン画像

期待の新星、デビュー戦の新人選手が奮闘

 両下腿(※1)義足(T62)の女子100mの日本記録保持者である福田陽彩(ふくだひいろ/都立大泉中)選手は、17秒04をマーク。6月のジャパンパラ陸上競技大会で出した自らの日本記録を0秒49更新し、「あまり練習できていなかったから、びっくりした」。国内では両下肢義足の選手が少なく、同クラスで200mにエントリーしたのは福田選手ひとりのみ。ペース配分などの難しさが伴うが、「“楽しく走る”が自分のモットー。それで記録が伸びればいいし、伸ばせるように頑張りたい」と、力強く語った。

※1 膝から足首まで

両足義足でさっそうと駆ける中学3年の福田選手(中央)。今後の成長が楽しみだ

 左前腕欠損(T47)の宮口いぶき(みやぐちいぶき/桐朋中)選手は、今大会がパラ陸上の初レース。義肢装具士の沖野敦郎(おきのあつお)さんの陸上教室に参加した際に大会情報を知り、男子100mと400mにエントリーした。中学の陸上部では1500mに取り組んでいるため、クラウチングスタートもほぼ初めての経験だったが、成功させた。100mは、隣のレーンを走ったリオ2016パラリンピック競技大会 男子4×100mリレー銅メダリストで同クラスの多川知希(たがわともき/ACKITA)選手のスピード感を肌で感じることができたといい、「大会に出てよかった」と、笑顔を見せた。


宮口選手はパラ陸上の初レースながら堂々とした走りを見せた

 女子CPサッカー(脳性まひ者7人制サッカー)日本代表でもある石原利恵(いしはらりえ/ACKITA)選手も、パラ陸上デビューを果たしたひとり。女子100m(T35)を18秒32で走り終えると、「新鮮な気持ちでレースに臨めた」と振り返り、「陸上を始めて走力も体力も上がり、CPサッカーにも良い影響を与えていると思う。陸上ではいつか国際大会に出てみたい」と話し、前を向いた。

東京ゆかりの古畑選手、遠山選手も出場

 「東京ゆかりパラアスリート」の選手も存在感を見せた。18歳でロンドン2012パラリンピック競技大会に出場した脳性まひ(T34)の古畑篤郎(こばたあつろう/アルケア)選手は、男子100mを16秒10で走った。この日は朝から不安定な天候で、レーサーを使用する古畑選手は雨対策として滑り止めの松やにを手袋に塗り準備していたが、レース中は雨が降らず、「逆に邪魔になってしまった」とタイムが伸びなかった理由を振り返る。200mは28秒62だった。

 もともと短距離種目を専門としているが、パラリンピックでは同クラスは100mと800mが実施されることから、近年は800mのレースにも挑戦。5月のワールドパラアスレティクスグランプリ大会(スイス)では日本新記録を樹立するなど、力を発揮している。「長い距離を走ることで、短距離のトップスピードに伸びを感じている」と話す古畑選手。来年のパリ2024パラリンピック競技大会を視野に入れつつ、「まずは来春の世界選手権(神戸)に出場し、好記録を全力で狙いたい」と、言葉に力を込めた。


古畑選手は力強い走りで100m、200mとも1着でゴールした

 東京ゆかりジュニアパラアスリートで車いす(T54)の遠山勝元(とおやまかつもと/ATOM-RT)選手は、男子100mが16秒09、400mが51秒76だった。T54は車いすのなかで最も障害が軽いクラスで、400mでは樋口政幸(ひぐちまさゆき/プーマジャパン)選手や西勇輝(にしゆうき/野村不動産パートナーズ)選手といった経験豊富な国内トップクラスの先輩と同組で走った。トップでゴールした西選手、2着の樋口選手とは2秒近い差が開いたが、最後まで粘りの走りを見せて自己ベスト更新につなげた。

 小学2年から中学1年の途中まで車いすテニスに取り組んだ。もともと走ることが好きで、中学2年から本格的に陸上をスタート。腕のリーチを活かした駆動力が武器で、「その持ち味を引き出す技術をもっと高めていきたい」と話し、前を見据えた。


高校3年の遠山選手は「長い距離も好きなので、1500mも頑張りたい」と話す

アジアパラ日本代表選手も好パフォーマンス

 10月22日に開幕する杭州アジアパラ競技大会の日本代表に選出されているメンバーも、それぞれの想いを胸に大会に挑んだ。


 脳性まひ(T34)の吉田彩乃(よしだあやの/関東パラ陸協)選手は、女子100mで20秒15をマークした。「19秒台を狙っていたので悔しいけれど、自己ベストが出てよかった」と笑顔を見せた。初出場となるアジアパラ競技大会では、100mと800mにエントリー予定だといい、「実は海外に行くのも初めて。不安もあるけれど、楽しむことを忘れずに頑張りたい」と語った。


「レーサーは風を切って走るスピード感が魅力」と語る吉田選手

 6月のパリ2023世界パラ陸上競技選手権大会ではユニバーサルリレーで金メダル、走幅跳では銅メダルを獲得した視覚障害(T12)の澤田優蘭(さわだうらん/エントリー)選手は女子200mに出場した。コーナーから直線に抜ける際の走りが、メイン種目のひとつである走幅跳の助走に活きるとして今大会に臨んだといい、アジアパラ競技大会では「ユニバーサルリレーでは世界選手権より良い走りを目指し、走幅跳では今季のベスト記録を狙う」とコメントした。


大きなストライドでガイドランナーとともに走る澤田選手(右)

 前述の男子T54の樋口選手の専門は中長距離。同クラスはアジア勢の選手層が厚く、アジアパラ競技大会ではハイレベルなレース展開が予想されるなか、今大会はスプリント力の強化とコンディション確認のため、男子400mにエントリーした。樋口選手はアジアパラ競技大会に向けて、「難しいレースになると思うが、トップ争いに食い込み、メダル獲得を目指していく」と、意気込みを語った。


  女子砲丸投の知的障害(F20)は、掘玲那(ほりれいな/ID岡山)選手が4投目と5投目でこの日最長の10m56を記録した。自身が持つ日本記録の12m40には届かず悔しそうな表情を見せたが、初出場のアジアパラ競技大会では「日本記録保持者として堂々とした投げを見せたい」と、力強く語った。また、前回大会(インドネシア)で銀メダルを獲得している中田裕美(なかだひろみ/長野パラ陸協)選手は、最後の6投目で10m13をマーク。2度目の大舞台に向けて、「目標の11mが出せるよう頑張りたい」と、笑顔で語った。


力強いパフォーマンスで存在感を見せた堀選手

最後の一投で記録を伸ばし、ガッツポーズで喜ぶ中田選手

パラ陸上のルールやクラス分けの詳細はこちらをご覧ください

(取材・文/MA SPORTS、撮影/丸山康平)