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楽天・ジャパン・オープン・車いすテニス・チャンピオンシップス2022

3年ぶりに開催!今大会は日本勢での戦い

 「楽天・ジャパン・オープン・車いすテニス・チャンピオンシップス2022」(以下、楽天オープン)が10月6日から3日間にわたり、有明コロシアムおよび有明テニスの森公園コートで行われた。今大会は、日本で唯一のATP(男子プロテニス協会)ツアー公式戦である「楽天・ジャパン・オープン・テニス・チャンピオンシップス」において2019年に新設された車いすテニスの部が、新型コロナウイルス感染拡大の影響で2年間の中止を経て、3年ぶり2回目の開催となった。

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10代選手が夢の舞台でプレー

 東京2020パラリンピック競技大会(以下、東京2020大会)の車いすテニス会場となった有明を舞台に、シングルス8人、ダブルス4組で頂点を争う今大会。国枝慎吾(くにえだしんご/ユニクロ)選手はシングルスのみにエントリーし、小田凱人(おだときと/東海理化)選手、三木拓也(みきたくや/トヨタ自動車)選手、荒井大輔(あらいだいすけ/BNPパリバ)選手、齋田悟司(さいださとし/シグマクシス)選手、高野頌吾(たかのしょうご/かんぽ生命保険)選手、川合雄大(かわいゆうだい/トップアスリートグループ)選手、城智哉(たちともや/同)選手はシングルス、ダブルスともに出場。ダブルスにはさらに餌取陽太(えとりようた/TTC)選手が出場した。

 多くの若手選手が出場したのも今大会の特徴だ。16歳の小田選手は2回目の楽天オープン。18歳の川合選手、19歳の高野選手と城選手、餌取選手は初出場。シングルス1回戦で東京2020大会金メダリストの国枝選手と対戦し、ストレートで敗れた城選手は、「すべてのスキルで圧倒された。とくに国枝選手のサーブからの展開は手も足も出なかった」と、世界トップの技とスピードに舌を巻いた。それでも「この貴重な経験を次に活かしたい」と話し、さらなる成長を誓っていた。

「楽天オープンで国枝さんと戦えたのは本当に光栄」と城選手
積極的に前に出てプレーをする高野選手(右)と、後衛を守る齋田選手(左)

シングルスは国枝選手が優勝、新星・小田選手は一歩届かず

 8日のシングルス決勝は、多くの観客が見守るなか有明コロシアムのセンターコートで行われ、第2シードの小田選手は2時間半に迫る激闘の末、格上の第1シードの国枝選手に第1セット3-6、第2セット6-2、第3セット6-7で敗れた。

 あと一歩、“王者”に届かなかったものの、16歳の若い力が躍動した。第1セットを落とした小田選手は、迎えた第2セットも0-2とリードされるが、第3ゲームでリターンエース*1を3本決めるなどによりブレークバック*2に成功。これでリズムをつかみ、要所でフォアハンドを決めるなどして6ゲームを連取。このセットを奪い返した。

*1リターンエース…サービスに対して相手が取れない場所に返球すること

*2ブレークバック…自身のサービスゲームを取られた直後に、相手のサービスゲームのブレークに成功すること

 最終の第3セットは国枝選手の精度の高いサーブとショットに押され、1-5とリードを広げられた小田選手。しかし、あと1ポイント決められると試合が終了するという場面でリターンエースを繰り出し、土壇場で国枝選手の4本のチャンピオンシップポイント*3をしのいでみせた。これで「ゾーンに入った」という小田選手は、一気に5ゲームを連取して6-5と逆転に成功。ところが、第12ゲームは最後に返球をネットにかけてしまい、国枝選手にブレークを許してしまう。タイブレーク*4でもフォアハンドがアウトになるなどミスが出て、最後は力尽きた。ネットを挟んで固い握手を交わす両者。観客からは大きな拍手が送られた。

*3チャンピオンシップポイント…決勝戦で優勝がかかった最後の1ポイントのこと

*4タイブレーク…ゲームカウントが6-6になった際に決着をつけるために行うミニゲームで、先に7点を取った選手が勝者となる

 試合終了後、タオルで何度も顔をぬぐっていた小田選手。悔しさと達成感が入り混じった涙だった。コートでマイクを向けられた小田選手は、「僕が車いすテニスを始めるきっかけになった国枝選手と、夢の場所で戦った。今日の試合は夢の試合だった」と、感極まった。

 小田選手は今季、グランドスラム*5に初出場するなど好調を維持。名実ともに次世代を担うホープに成長した。国枝選手との対戦は4回目で、今回初めてセットを奪うことができた。一方、対日本人選手では2006年以来、不敗を続ける国枝選手は、「いつか彼にやられる日が来る。それが今日かもしれないと、試合中に何度もよぎった」とコメント。そして、自身が刻んできた歴史を塗り替えるような一戦を振り返り、「これから何度もこうした名勝負が生まれると思う。ぜひ、車いすテニスに注目してほしい」と観客に呼びかけ、締めくくった。

*5グランドスラム…全豪オープン、全仏オープン、ウィンブルドン、全米オープンの四大大会を指す総称

ダブルスは荒井・三木組が大接戦を制す!

 7日のダブルス決勝は、雨天により有明コロシアムのセンターコートに会場を変更して行われ、東京2020大会でベスト16の荒井・三木組が、第1セット6-4、第2セット7-6と大接戦で10代ペアの川合・小田組を下した。

 試合は、荒井・三木組が第7ゲームをブレークして第1セットを先取。第2セットでは荒井・三木組が第10ゲームと第12ゲームの2度、チャンピオンシップポイントを握るが、小田選手に鋭いショットを決められ、タイブレークに突入した。7点先取のタイブレークは、川合・小田組が2-1とリード。しかし、そこから荒井・三木組が4連続でポイントを決めるなど、その後も粘る相手を振り切った。

 試合後の会見では、荒井選手は「勝って去年の思い出を更新したかった。こういう結果になってすごく嬉しい」と笑顔を見せた。三木選手は「(相手からは)ここで爪痕を残してやるぞという勢いを感じた。そこを僕らがどう跳ね返し、壁になるかといった試合だった。年下の世代が出てくるのは嬉しいことだし、僕らもまだまだ伸びていきたいと思う」と語り、前を向いた。

 敗れた川合選手は「これだけの観客の前でプレーするのは初めてで緊張した。負けたのはめちゃくちゃ悔しいけれど、その中で良いプレーができたと思う」と話し、小田選手は「パラリンピックペアの圧を感じた。最後に力の差が出た」と、敗戦を受け止めていた。

東京2020大会日本代表ペア(左)に10代ペア(右)が挑んだダブルス決勝
最後まで粘りを見せた川合選手(左)と小田選手(右)
ダブルス表彰式で笑顔を見せる荒井選手(左)と三木選手(右)

世界の車いすテニスのトップ選手が望む同時開催

 前述のとおり、楽天オープンは2019年に車いすテニスの部として初めて実施された。ATPツアーでの車いすテニスの同時開催は、国枝選手にとっても悲願だった。今年9月の全米オープンでは、国枝選手自ら海外選手をリクルートするなど熱心に活動。その思いに応え、東京2020大会男子シングルス銀メダリストのトム・エフべリンク(オランダ)選手らが出場を予定していた。

 残念ながら今回はビザの関係で海外勢はエントリーを見送ることになったが、「世界の車いすテニスのトップ選手はこれ(ATPツアーでの車いすテニスの同時開催)を望んでいる」と国枝選手。そして、「日本でできるだけクオリティの高いものを見せたい」と語り、車いすテニスのさらなる認知度向上に期待を寄せた。

試合後の会見に臨む国枝選手

(取材・文/MA SPORTS、撮影/加藤誠夫)