特集TOTAL BWF WORLD PARA-BADMINTON CHAMPIONSHIPS 2019(パラバドミントン世界選手権)

2年に一度行われるパラバドミントンの世界選手権が、8月20日から25日までスイスのバーゼルで開催された。東京2020パラリンピックの出場権は、今年3月のトルコ国際から来年3月のスペイン国際までの対象13大会で獲得するポイントランキングで決まる。世界選手権はその獲得ポイントが通常の2倍になり、上位に進出すれば東京パラ出場に大きく前進する重要な大会だ。日本代表は26人がエントリーし、金1、銀1、銅9の計11個のメダルを獲得した。また、史上初めて健常の世界選手権と同時開催となり、最終日はパラバドミントン3種目の決勝戦が健常と同じメインホールのコートで行われるなど、最後まで盛り上がりを見せた。



<車いす>21歳・里見が快進撃、男子も躍進

 日本勢唯一の金メダルを獲得したのは、車いす女子WH1の里見紗李奈(さとみさりな)(NTT都市開発)。世界選手権初出場ながらシングルスでは予選リーグを3戦全勝で突破し、決勝トーナメントは準々決勝で前回大会銀メダルのジン・ツァン(中国)、準決勝で世界2位のカリン・スーター エラス(スイス)を破って決勝に進出する快進撃を見せる。その決勝では、元世界1位のスジラット・ポッカム(タイ)と対戦。相手の精度の高いショットを丁寧に拾って粘り、21-16、21-15のストレートで下した。


 初優勝を飾った里見は「ポッカム選手は憧れの選手。今まで勝ったことがないのに、世界選手権の決勝で破るなんて、信じられない」と喜びを爆発させた。また、世界ランク1位で臨んだ里見とWH2の山崎悠麻(やまざきゆま)(同)が組んだ女子ダブルスは、山崎の体調不良により準決勝で棄権となったが、銅メダルを獲得した。


里見紗李奈は予選リーグを全勝で勝ち上がり、決勝トーナメントでも強敵を次々と撃破。見事、頂点に立った

表彰式で金メダルを授与され、笑顔を見せる里見

 WH1-2女子ダブルスでは、福家育美(ふけいくみ)(ダイハツ工業)・小倉理恵(おぐらりえ)(ブリヂストン)組も息の合ったコンビネーションで勝ち上がり、3位に入った。小倉はシングルスでも銅メダルを手にした。4強のうち、小倉を除く3人が中国選手。層の厚い強国にあと一歩のところまで迫り、確かな足跡を残した。


 また、WH1-2男子ダブルスでは長島理(ながしまおさむ)(LIXIL)・渡辺敦也(わたなべあつや)(アキレス)組が準決勝で第2シードの韓国ペアを相手にフルゲームの接戦に持ち込み、敗れたものの銅メダルを獲得。さらに渡辺はWH2の男子シングルス準々決勝で世界ランク4位のイングランドの選手に13-21、21-14、21-19で競り勝つなど活躍。準決勝で同1位の韓国の選手に敗れたが、日本人男子WH2選手として初の表彰台という快挙を成し遂げ、「負けたのは悔しいが、自分史上で一番良かった。世界選手権でプレーできたことに感謝したい」と笑顔を見せた。


 国内ではこれまで男子WH2クラスの選手が少なく、ダブルスではWH1同士が組んで出場することもある。だが今回は、渡辺のほかに、チーム最年少で日本障がい者バドミントン連盟“次世代アスリート”の17歳・梶原大暉(かじわらだいき)(福岡市立福翔高)が出場し、単複ともに決勝トーナメントに進むなど、勢いが出てきた。東京2020パラリンピックに向けて、さらなる飛躍が楽しみだ。


長島(右)・渡辺組が車いす男子ダブルスで銅メダルを獲得。互いの健闘を称えた

<立位>鈴木がライバル対決に敗れ、「1年後に向け課題が見えた」

 上肢障害女子SU5シングルス2連覇を狙う世界ランク1位の鈴木亜弥子(すずきあやこ)(七十七銀行)は順当に決勝まで勝ち進み、決勝で今季2連敗中の楊秋霞(やんちゅうしゃ)(中国)と対戦。健常と同じメインホールでの初試合で空間の感覚がつかめず、出足こそミスが続いたが、「楊選手に勝つため」と強化してきたフットワークを武器に試合を優位に進め、第1ゲームを先取。だが、第2ゲーム中盤から楊のコースを突く正確なショットに足が止まりはじめ、第3ゲームは一度もリードできず、悔しい敗戦を喫した。


 鈴木は、一度、現役引退したが、パラバドミントンが東京2020パラリンピックの正式競技に採用され、初代女王を目指して復帰した。「課題が見えた。あと1年、自分のできることをやるしかない」と決意を語る。なお、鈴木は下肢障害SL3の伊藤則子(いとうのりこ)(中日新聞社)と組んだ女子ダブルスでは銅メダルを獲得した。


SU5女子世界ランク1位の鈴木亜弥子。決勝ではライバルの楊と激闘を演じた

 この女子SU5では、亀山楓(かめやまかえで)(高速)が、シングルスとSL3山田麻美(やまだあさみ)(LAVA International)と組んだ女子ダブルスで銅メダル。いずれもファイナル進出を逃したが、強敵がそろうカテゴリーで2個の銅メダルを手にしたことは、大きな自信になっただろう。


 SL3-SU5ミックスダブルスの末永敏明(すえながとしあき)(昭和電工)・杉野明子(すぎのあきこ)(ヤフー)組は、2大会連続で銅メダルを獲得。下肢障害ながら抜群の守備力とラケットワークが光る末永と、杉野のフットワークを活かした攻撃的な陣形が持ち味の日本を代表する混合ペア。準決勝では微妙な判定からリズムを崩してしまったが、粘りのプレーに観客から大きな拍手が送られていた。


 東京アスリート認定選手である低身長SS6男子の畠山洋平(はたけやまようへい)(Tポイント・ジャパン)は、シングルスで混戦の予選リーグを勝ち上がり、ベスト16で大会を終えた。SS6クラスで日本勢唯一のエントリー。「世界のレベルが向上している中で成績を残し続けたい。自分のプレーを見て、日本の低身長クラスの選手が増えればいい」と語り、前を見据えた。


2大会連続で銅メダルを獲得した末永(左)・杉野組

低身長SS6クラスならではのアグレッシブなプレーを見せた畠山洋平

東京に向け、強化の成果と課題が明確になった大会

 パラバドミントンは東京大会からパラリンピック正式競技になる。各国の選手が「初代金メダリスト」を目標に強化を図っており、健常とパラのナショナルチームがともに練習する国もある。日本代表は西葛西のパラバドミントン専用体育館を拠点に練習に取り組んでおり、今回の11個のメダル獲得はその成果といえる。


 大会を総括して、日本代表の金正子(きむじょんじゃ)ヘッドコーチは「今大会は4強に入った選手が多く、世界と五分の勝負ができることが証明できた」とコメント。また、健常と同様にパラの世界も競技レベルが向上していることに触れ、「体力面など強化してきた点でクリアできていない部分があることもわかった。2020年に向けて繰り返し練習していく」と語り、選手のさらなる成長に期待をしていた。


栄養やメンタルサポートの専門家らも帯同した日本選手団

日本は金1、銀1、銅9の計11個のメダルを獲得した

里見の優勝を喜ぶ山﨑将幸(やまざきまさゆき)コーチ(左)と古屋貴啓(ふるやたかひろ)コーチ

SL3-SU5女子ダブルスの山田と亀山にアドバイスを送る金コーチ(中央)と臧玲(ざんりん)コーチ(左端)

(取材・文、撮影/MA SPORTS)

パラバドミントンのカテゴリーとクラス分け

1 WH1 車いす シングルスを 半面で戦う
2 WH2
3 SL3 立位 下肢
4 SL4 シングルスを 全面で戦う
5 SU5 上肢
6 SS6 低身長

出典:一般社団法人 日本障がい者バドミントン連盟HP