特集都立学校活用促進モデル事業スポーツ体験教室

都内の特別支援学校の体育施設において実施される「都立学校活用促進モデル事業」。障害がある人や障害者スポーツを支える人だけでなく、誰もが楽しめるスポーツやレクリエーションの体験教室を開いている。事業がスタートした2016年度の実施校は5校だったが、4年目の今年度は20校にのぼる。それとともにこの体験教室に協力する団体も増え、体験可能な種目も多様化し、参加者やボランティアの数も増加。今回は、地域で自主的にスポーツ活動の場を担う地域スポーツクラブが協力する教室を特集する。



地元ゆかりのニュースポーツ体験も人気

 体験教室の実施種目は、生涯スポーツからパラリンピック競技、レクリエーションまで幅広く、20校それぞれで内容が異なる。取材に訪れた府中けやきの森学園では、「スポーツ・レクリエーション教室」を開き、今年度4度目の開催となった2月11日は、ラリーテニス、ボッチャ、スポーツ玉入れ、こま・けん玉、卓球バレーの5種目を実施した。実は、もともとは4種目の予定だったが、参加者14人、ボランティア13人の総勢27人もの人が集まる人気ぶりで、急きょ5種目に増やしたという。


 講師役を務めるのは、地元の地域スポーツクラブ「府中市総合型f(エフ)スポーツクラブ」のメンバーの方々。あらゆる世代の人たちが集い、日ごろからさまざまなスポーツ活動に自主的に取り組んでおり、この日も10人が講師や運営スタッフとしてサポートした。

柄(え)が短いラケットでスポンジボールを打ち合うラリーテニスは府中市が発祥とされ、メンバーのなかには開発に携わった人も。また、運動会の定番である玉入れをスピード感あふれる競技スポーツに進化させたスポーツ玉入れについては、ボールやバスケットといった専用の道具類を保有しているfスポーツクラブが貸出し、それぞれ実施をしている。このように、その土地ゆかりの種目やニュースポーツが体験できるのも、体験教室の特徴のひとつだ。


府中生まれのラリーテニス。小さいラケットでスポンジボールを打ち合う

グループに分かれてチームワークも学ぶ

受付を済ませた参加者たちは、名前を書いたシールを衣服に貼ってスタンバイ。開講式が始まり、講師とボランティアが紹介されたあと、全員で準備運動をして、いよいよ体験教室が始まった。


開講式のあとは全員で入念に準備運動を行った

 この日は5つのグループに分け、時間を区切ってそれぞれの種目に挑戦。ボッチャは投球ごとに歓声があがり、ラリーテニスと卓球バレーは白熱した攻防が続く。CDや折り紙を利用した手作りのこまはカラフルで参加者を楽しませ、けん玉では高い集中力を見せる人も。スポーツ玉入れは、講師やボランティアがルールと身体の使い方をレクチャー。空中でボール同士をぶつけてバスケットに入るよう投げ方を工夫するなど、息の合ったプレーを発揮するグループもあった。


ジャックボール(目標球)と自分のボールの距離を真剣に測る参加者たち

白熱したラリーが続いた卓球バレー。得点を決めて参加者の笑顔が弾ける

専用のボールを使うスポーツ玉入れ。講師が「下半身を使って投げてみよう」とアドバイス

 途中で休憩を挟みながら、約2時間にわたり汗を流した参加者たち。閉講式では、fスポーツクラブの髙橋弘蔵(たかはしこうぞう)会長が「楽しかったですか?」と呼びかけると、参加者たちから「ハーイ!」という元気が声が返ってきた。


18歳の高橋猛(たかはしたける)さんはfスポーツクラブのメンバーでもあり、コーチから体験教室があることを聞き、参加したという。「ボッチャやラリーテニスはやったことがあったけれど、玉入れは初体験。バスケットに入れるのが難しかった。でも何回か挑戦してみると、うまくできるようになってよかったです」と振り返り、「次回もぜひ参加したい」と力強く話していた。


“むかし遊び”のけん玉に、車いすから立ち上がって挑戦する高橋猛さん

ボランティアや講師にも力を与えるスポーツの力

 印象的だったのは、会場にいる全員が終始笑顔だったことだ。ボランティアの大工原広子(だいくばらひろこ) さんは、「障害がある娘も参加しています。何日も前から楽しみにしていて、初めて会う子どもたちとも友だちになったようです。障害の有無に関係なく、いろんな人と知り合えるのはスポーツやレクリエーションのすごいところだと改めて感じました。みんなの笑顔がこんなに見られて、私も楽しかったです。こうした機会がこの先もずっと継続されることを願っています」と語る。


ボランティアとして2度目の参加となった大工原広子さん

 スポーツの力により変化をもたらすのは、参加者だけではなかったようだ。fスポーツクラブで長年にわたり卓球指導などに従事し、障害者スポーツの大会にも指導協力している安藤美江(あんどうよしえ)さんは、「障害がある方と触れ合うことで、講師役のメンバーの意識が変わってきた」と話す。「スポーツを指導していると言葉が強くなることもありましたが、この体験教室に協力するようになってから、心が穏やかになったと感じます。他のメンバーも『毎回、こちらが学ばせてもらっている』と話しているし、実は私たちがもらうものが多いことに気づきました。体験教室をやって良かったなと、感謝しています」


「体験教室を通して私たちの意識も変わった」と話す、fスポーツクラブの安藤美江さん

 当事業は来年度も実施予定。詳しくはホームページ(https://www.tef.or.jp/school/)でご確認を。興味を持った方は、また来年度、ぜひ体験教室に遊びにきてね!


閉講式後に全員でfスポの“f”ポーズで集合写真におさまる。参加者年齢は7歳~23歳、ボランティア年齢は23歳~61歳と幅広かった

(取材・文/MA SPORTS、撮影/植原義晴)