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2014 ゴールボール世界選手権

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 2012年に開催したロンドンパラリンピックで、ゴールボールの日本女子チームが金メダルを獲得し、日本中が喜びに沸いたことは、まだみなさんの記憶に新しいことと思います。
 さて、今回は、4年に1度開催されるゴールボールの世界選手権に日本チームのスタッフ(情報分析)として参加した増田徹氏による大会のレポートをご紹介します。

Espoo 2014 IBSA
World championships Goalball に参加して

ゴールボール日本代表チーム
スタッフ 増田 徹
(公益社団法人東京都障害者スポーツ協会
東京都多摩障害者スポーツセンター)

 2014年6月30日~7月5日にフィンランドのエスポーで開催された”IBSA World championships Goalball”に全日本チームの情報分析として参加してきました。今回、大会の模様や結果等を報告させていただきます。

 今大会は、世界各地域で勝ち抜いた国が一同に集まり、2016年のリオデジャネイロ・パラリンピックへの最初の出場権を賭けた重要な大会でもありました。

 日本は、昨年11月に北京で行われたアジア予選を勝ち抜いて、男女揃って出場しました。

 男子が16か国。女子は12か国が出場しました。

 男子は、16か国を8か国ずつ2つのグループに分け、総当たりの予選リーグを戦い、上位4か国が決勝トーナメント(準々決勝、準決勝、決勝)に進んで順位を決定しました。女子も同様に出場国を6か国ずつに分け、上位4か国が決勝トーナメントに進んで順位を決定しました。

 このように男女合わせて28か国が出場し、大会期間中102試合を行います。このため会場は、Sport Hall Tapiola と Sport Hall Summaの2会場に分かれ、予選リーグ中は朝9時から20時過ぎまで1日約22試合と多くの試合が行われました。

日本の成績

男子 pool B
対 リトアニア 7-9 ● パラリンピック常連国で毎回上位に食い込む強豪国に対し粘り強く戦いました。
対 エジプト 9-10 ● 初戦のカナダ戦1-10で負けているエジプトに対し痛い敗戦でした。
対 トルコ 4-11 ● 初戦の中国に勝ち連勝と波に乗っている相手に前半4-3で折り返すも後半は押し切られました。
対 ブラジル 1-8 ● 優勝国ブラジル。前半0-4とバウンドボールにやられました。
対 カナダ 5-10 ● 前半1-5と折り返し、後半4点とりいい形でしたが、前半の失点が痛かった。
対 中国 6-14 ● 後半は4-4でしたが、この試合も前半2-10と差がついたのが痛かった。
対 ベルギー 9-6 ○ 今大会初勝利。本来の日本の力をようやく出せ、次に繋がる試合でした。

最終結果 予選リーグ 1勝6敗 7位 予選通過できず。

女子 pool X
対 ドイツ 2-1 ○ 前半2-1とリードし後半は日本の得意であるディフェンスが機能して勝利。
対 トルコ 1-5 ● トルコのバウンドボールに対し、日本のディフェンスが崩されました。
対 ロシア 2-1 ○ 前半0-0で折り返し、後半早々安達選手が先取点を挙げ勝ちました。
対 アメリカ 4-3 ○ 前半4-2で折り返し、後半守りきり3勝目を挙げました。
対 フィンランド 4-0 ○ 前半0-0で折り返しましたが、後半攻撃がきまり見事に勝ちました。

予選結果 予選リーグ 4勝1敗 2位 通過

女子決勝トーナメント
準々決勝 対 ウクライナ 1-0 ○ 前半に先制点を挙げ守り切りました!
準決勝 対 アメリカ 0-2 ● 前半早々に先取点を奪われ後半も追加点を許し敗退。
3位決定戦 対 トルコ 0-3 ● 前半、先取点を許し0-1で折り返しましたが、後半も追加点を許し惜敗。

 ロンドンパラリンピックで日本の女子は金メダルを獲得し、今大会も優勝を目指し、最低でもリオパラリンピックの出場権を獲得することを目標に戦ってきましたが、男女ともに3位まで入賞できず、目標を達成することはできませんでした。

 ロンドン以降、男女ともに強化を続け、特に男子は前回出場できなかった世界選手権を予選会で勝ち抜き出場しました。今大会前に主力選手の一人を怪我で欠いてしまったこともありましたが、今までの大会と違い、接戦や後半点差が離れていても少しずつ得点を返し、粘り強く最後まで戦うことができました。

 女子は、実力的にも紙一重で、どの国が勝ってもおかしくない状況です。優勝したアメリカ、2位のロシアには予選では日本は負けていません。日本は、ひとりの選手が力で得点を獲るというスタンスではなく、全員で時間をかけて得点を奪っていくスタンスであるため、先制点を許してしまうと苦しい試合になってしまいます。

 今後は、一人一人の投球力の向上とペナルティーショットの確実性。引かないディフェンス力の強化と今までと違うディフェンスシフトを確立して、来年必ずリオパラリンピックの出場権を獲得し、再びリオの決勝戦に立てるよう進めていきます。

 私は、情報分析という立場で同行させていただきました。情報分析は、他国の試合をビデオで撮影。そして、投球の軌跡等を記録し、また、オフェンスの傾向やディフェンスの際のクセや傾向も記録して、それをベンチスタッフに伝え作戦を立てる上の材料を作成しました。

 ロンドンパラリンピックでも同様のことをしましたが、今回は試合数が102試合、会場も2会場あったため、4人のスタッフで回していきました。

 他国のゲーム分析は、ゴールボール専用のソフトを2年間かけて開発したり(ドイツ)、バレーボールで使用しているソフト(データバレー)をゴールボール用に作り替えて使用している国(フィンランド)もありました。このふたつはビデオと情報がリンクされており、欲しい情報がそのゲーム終了後にいつでも出すことができ、また試合を見直すことができるものでした。他の国もベンチでも投球分析を行うなど、ゲームの分析を以前より積極的に行っていると感じています。実際にまだ分析を行っていない国から、日本はどのようにしているのかと質問を聞かれました。ほとんど手作業でしていると答えるとかなり驚いていましたが…。

 ベンチで投球の軌跡を取ったり、前に出てディフェンスをするシフトは、日本が始めたことでしたが、今の世界では当然のように行ってきており、また、日本が始めた手法を真似て、それぞれの国での特徴を生かしながら様々な力をつけてきている気がします。分析について、日本の現状ではまだパソコンのソフトを開発するということはできていません。このため手作業でもそれに勝る方法を考えて、またこれまでにない日本独自の物を作っていきたいと思っています。

 また、今大会いくつかの国の選手が家族を連れて大会に参加していました。特に女子選手が出産後にも選手として参加し、その家族が一緒に来ていました。

 オリンピック選手にも出産後に選手として活躍している選手もいます。今後、障害者スポーツにおいても出産後に活躍する選手が増えていくのだなと感じました。

日本ゴールボール協会オフィシャルサイト
http://www.jgba.jp/index.html

男子決勝トーナメント

男子トーナメント表

女子決勝トーナメント

女子トーナメント表

男子チーム 試合の様子

女子チーム 試合の様子