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第21回ジャパンデフバレーボールカップ川崎大会

男子は「好きやねん」が2年ぶりV!
女子は初出場の「DEAF ONE TEAM 2020」が制す

 2月21日から23日の3日間にわたり、「第21回ジャパンデフバレーボールカップ川崎大会」が川崎市とどろきアリーナで開催された。聴覚障害者によるバレーボールの国内最高峰の大会で、全国から男子9チーム、女子19チームが参加。男子は予選リーグ上位6チーム、女子は同上位8チームが決勝トーナメントに進出して頂点を争い、男子は好きやねん(大阪府/近畿)が、女子はDEAF ONE TEAM(デフ ワン チーム)2020(北海道)がそれぞれ優勝した。

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好ゲームの男子決勝、6年連続同カード!

 男子は豊鯱会(ほうこかい)(愛知県/東海)と好きやねんが決勝で対戦。第16回大会から昨年まで、5年連続でこの2チームが決勝で対戦しており、ここまで豊鯱会が3勝2敗と一歩リード。今年のライバル対決に注目が集まるなか、25-15、22-25、15-8で好きやねんが勝利し、雪辱を果たした。

 第1セットは、好きやねんが開始早々から連続得点を決めて先取。第2セットは一転して、豊鯱会が試合を優位に進める。最後まで集中力を維持し、粘る相手を振り切った。15点マッチの第3セットは序盤から一進一退の攻防が続くが、豊鯱会がサーブミスやタッチネットなどで連続得点を許し、3点ビハインドでコートチェンジに。対する好きやねんは、相手のリズムが崩れたところを見逃さず、堅守からボールをつないで確実にポイントを重ね、最後は今井勇太(いまいゆうた)のサービスエースで熱戦を締めくくった。

男子決勝は、両チームとも一歩も譲らない手に汗握るフルセットの接戦に

 喜びを爆発させる好きやねんのメンバーたち。17歳の高校3年生ながらキャプテンを務めた寺井捺貴(てらいなつき)は、「(昨年は準優勝に終わり)この1年間は、チームがひとつになるプレーを心掛けて練習を重ねた。今日はその勝ちたい気持ちが結果につながったと思う。ほんまに嬉しいです」と笑顔を見せていた。

 また、3位には愛天翔(あいてんしょう)(愛知県/東海)が入った。

2大会ぶりに男子王者に返り咲いた好きやねんのメンバーたち

女子は新チームが旋風起こし初優勝!

 女子は、昨年優勝のtortoise(トータス)(大阪府/近畿)を準決勝で破ったDEAF ONE TEAM 2020が、過去に4連覇している強豪・一期一会(いちごいちえ)(兵庫県/近畿)を決勝で25-16、25-22で破り、優勝した。

 DEAF ONE TEAM 2020は、東京2020オリンピック・パラリンピックの開催を機に結成した新チーム。初出場ながら、中田美緒(なかたみお)ら日本代表候補選手を複数擁しており、安定感あるプレーで存在感を発揮した。決勝の第1セット、序盤はシーソーゲームとなるが、女子バレーの伝統校・八王子実践高校出身の八木沢美穂(やぎさわみほ)にボールを集めて4-5の場面から逆転に成功。終盤にも6連続得点を挙げて波に乗った。第2セットは互いに丁寧にボールをつなぎ、シーソーゲームになるなか、要所でサービスエースやアタックを決めたDEAF ONE TEAM 2020がじわじわと差を広げ、競り勝った。

女子決勝は、堅い守りでもリズムを作ったDEAF ONE TEAM 2020が制した

 DEAF ONE TEAM 2020は北海道の登録チームになっているが、実際は沖縄や神奈川、東京、愛媛など全国から選手が集まる。そのため、事前の練習は十分にできないまま本番に臨んだそうだが、日本代表の合宿に参加している選手が多く、息の合ったプレーを見せていたのはさすがだった。キャプテンの中田は、「メンバー同士でアイコンタクトを取りながら、落ち着いてプレーできてよかった。来年、2連覇できるようなチームに成長させたいし、デフバレーボールの魅力を広げていく活動にも力を入れたい」と話した。

 また、3位にはtortoiseが入った。

初出場・初優勝を飾った女子のDEAF ONE TEAM 2020のメンバーたち

デフバレーボールならではの様々な工夫

 デフバレーボールの国内の大会では、補聴器をつけてプレーすることが認められている。ただ、プレー中は音や声が聴き取りにくい選手が多いため、コート上ではアイコンタクトや手話などでコミュニケーションを図る。ベンチワークを含め、普段から連係プレーの精度を高める練習が必要であることがわかる。

 また大会の進行面では、試合結果やアナウンスを会場内の電光掲示板に映像と文字で周知し、また手話通訳による情報保障を行うなど、デフアスリートが安心・安全にプレーできる競技環境が整備されていたことが印象に残る。

聴覚障害者の方にも情報が伝わるよう、会場の大画面に案内を表示する工夫がされていた
閉会式で表彰されるチームや個人を手話の“拍手”で称える参加者たち

 大会会長で日本デフバレーボール協会の大川裕二(おおかわゆうじ)理事長は、「川崎市とどろきアリーナでの大会開催は5回目。関係各所や大勢の方の協力があってここまで続けてこられた。手話を覚えて毎年参加してくれる審判員もいて、スポーツを通した共生社会の実現、障害者理解の発展に貢献できているのではと思っています」と話す。

「聴覚障害者の方でもデフバレーボールを知らない人も多い。競技普及のため、これからも様々な情報発信を続けていきたい」と語る大川理事長

 2017年のデフリンピック(トルコ・サムスン)では、男子日本代表が7位、女子日本代表は金メダル獲得という輝かしい成績を残した。今大会は、女子日本代表を率いる狩野美雪(かのうみゆき)監督が視察に訪れ、選手たちのプレーを見守っていた。大川理事長によると、今年度はガーナやウクライナといった海外チームから大会参加の問い合わせがあったといい、今後は国際化していくことも視野に入れているとしている。

 今後のデフバレーバレーボール界のさらなる発展に期待したい。

メインアリーナは一般の国際大会でも使用するスポーツ用床材タラフレックスコートが敷設された

(取材・文/MA SPORTS、撮影/植原義晴)