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パラスポーツインタビュー詳細

畠山 洋平さん(東京アスリート認定選手:バドミントン)

畠山洋平さんの写真

プロフィール

名 前

畠山 洋平(はたけやま ようへい)

生年月日

1987年8月8日

出身地

東京都

所 属

株式会社Tポイント・ジャパン

クラス

SS6(低身長)

平成31年度の「東京アスリート認定選手」、バドミントンの畠山洋平選手にインタビューを行いました。東京2020パラリンピック競技大会(以下、東京2020大会)で初めて正式競技として採用されるバドミントン。競技を始めたきっかけや競技の魅力について、いよいよ1年後に迫った東京2020大会に向けての意気込みなどをお聞きしました。

畠山選手の障害について教えてください。

 遺伝子の突然変異による「軟骨無形成症」という病気で、軟骨に栄養がいかないことで腕と足の骨が伸びず、手足が短くなってしまいます。生まれてすぐ、ちょっと体形が違うことに気づき病院で診てもらい判明しました。幼い頃に両親から背が伸びにくい病気だと言われたのですが、小学校に入った頃は周りとそんなに変わらなかったので、そこまで気にしていませんでした。年を重ねると周りからの視線に気付いてきましたが、自分には特別なオーラがあるのかな、なんて思っていました(笑)。しかし、小学校高学年になっても身長が伸びず、改めて両親に病気のことを聞いて、大きなショックを受けすごく泣いた記憶があります。ただ、小中高一貫校だったため、幼少期から共に過ごした友だちは全く変わらず接してくれましたし、中学・高校と途中から入ってきた友だちも同じように接してくれました。周りには本当に恵まれていたのだなと思います。

パラバドミントンを始めたきっかけは?

 中学で野球部を引退し、高校入学まで時間ができたので、バドミントンを遊びでやっていたら面白くて、高校ではバドミントン部に入りました。当時はまだ、パラバドミントンの存在をまったく知りませんでした。卒業してからしばらくは競技から離れていたのですが、パラバドミントンの長島理選手が出演した、リオ2016パラリンピック競技大会の閉会式の中継を見たことが大きなターニングポイントとなりました。長島選手が「東京2020大会からバドミントンが正式競技になり、低身長のクラスもあります」という話をしていて、低身長の選手が出られるパラリンピックの種目があることを初めて知りました。すぐに(一社)日本障がい者バドミントン連盟に連絡をして、身長制限もクリアしていたので、その年の9月から再びバドミントンを始めました。

初めて出場した大会について教えてください。

 競技を始めて3ヵ月後、2016年12月に行われた第2回日本障がい者バドミントン選手権大会に出場しました。高校の時にバドミントンの経験はあったものの、10年ぶりにいざ練習を始めると、ブランクをすごく感じました。足が動かないし球も飛ばない。1回目の練習の時は全然できなかったですね。母校の部活の先生にお願いをして練習させてもらい、そのおかげで最初に出た大会で優勝することができました。その後、(一社)日本障がい者バドミントン連盟の強化指定選手の選考会でも勝つことができ、2017年4月から強化指定選手に選ばれました。

競技に本格的に取り組むため、仕事の環境も大きく変えたそうですね。

 2017年6月にタイで開催された国際大会(タイ パラバドミントンインターナショナル)に初めて出場したのですが、シングルス、ダブルスともに予選敗退で全く歯が立ちませんでした。競技を始めてすぐだったということもありますが、当時はフルタイムで働いていたので、練習が金曜日の夜と土日にしかできませんでした。海外の選手に比べると練習時間が短かったので、このままではだめだと思い、アスリート雇用契約をしてくれる会社に入るため就職活動を始めました。そうして、その年の10月に株式会社Tポイント・ジャパンに入社して、競技に集中できるようになりました。

所属先のサポート体制について教えてください。

 会社が遠征費を一部負担してくれるほか、インセンティブ制度があり、国際大会でメダルを獲ると報酬をもらえます。報酬というのはモチベーションになるので、すごくありがたいです。そして、会社にバドミントンクラブがあるのですが、たまに練習に参加させてもうこともあって、そこで繋がった人たちからも「頑張ってね!」と応援してもらっています。

ふだん練習はどのように行っていますか?

 週に5~6日、基本的にはジュニアチームで練習しています。私は低身長クラスなので、背の高い大人と練習するより、小学4~6年生の自分と同じくらいの身長の選手と練習した方が、飛んでくる打球の高さとかが似ているんです。例えば、遠くに飛んだ球を受けるとき、大きい選手だとすぐに触れることができますが、小さい選手は後ろまで行って打たなければいけません。そういう球をさわるタイミングとか、球の返ってくるスピードとかが、ジュニアと似ているので、とても良い練習になっています。

お休みの日はどのように過ごしていますか?

 「休みの日はしっかり休む」ことを心がけているので、寝ていることが多いですね。あとは、映画が好きなので、映画館に観に行くこともあります。最近は「アラジン」を他の選手と観に行きましたよ。

大会前の”勝負飯”はありますか?

 海外遠征に行くときは、出発する前に空港でたこ焼きを食べます!海外では食事が合わないこともあるので、電気ケトルを持っていって、お湯を沸かして日本から持って行ったものを作って食べることも多いです。帰国したときには、お寿司かラーメンを食べることが多いですね。

憧れの選手や、目標の選手はいますか?

 目標は、イングランドのジャック・シェパード(SHEPHARD Jack)選手とクリスティン・クームス(COOMBS Krysten)選手です。パワーがすごくて、スクワットで120kgの重りを上げるんですよ。自分も頑張って、今100kgまで上がるようになりました。憧れの選手でもあり、倒したい相手でもあります。彼らの試合は見ていて楽しいんです。あんな試合をしたいなと思います。

「ここを見てほしい!」という得意なプレーは?

 “ラリー”するところをぜひ見てほしいです。決め球を持っていないので、しぶとく球を拾って拾ってラリーして、相手にあまい球を上げさせて点を取るというのが自分のプレースタイルです。そのためにはフットワークが大事なのですが、私の場合はパワーが弱いので、スクワットなどのトレーニングで筋力をつけたり、反発力を強くしたりしています。低身長クラスは、ネットの高さもコートの広さも一般のバドミントンと同じなので、選手たちにとっては、ネットが高くてコートも広いんです。なので、ジャンプして打ったり、ダイビングして球を拾ったりというプレーが多くなります。そういうダイナミックなプレーが低身長クラスの魅力だと思うので、ぜひ注目してください!

座右の銘を教えてください。

 「思い立ったが吉日」がモットーです。リオ2016パラリンピック競技大会の閉会式を見て、自分でもチャレンジできることを知り、すぐ行動したからこのようなたくさんの出会いがありました。ジュニアチームでの練習にしても、情報を聞いてすぐに行動を起こしたことで、いい練習環境を整えることができました。なので、これからも思ったら迷わずやろうと決めています。バドミントンを始めてから、そういう行動力も強くなったと思います。

パラバドミントンを始めたことで変わったことはどんなことですか?

 自分の視野が広がりました。バドミントンを始めなければ、転職することも、海外に行くこともなかったと思います。このようにインタビューを受けている状況も以前は考えられませんでした。あとはやっぱり、低身長という自分の障害に対して、ちゃんと向き合えるようになったのが一番大きいと思います。競技を始める前は、否定ではないですけど、自分の中で障害者という認識がなく、障害者手帳も持っていませんでした。でも、世の中には私を指さして「小さい人がいる」と言う人もいて、そうするとやっぱり障害者なのかなって思ったり…そういう葛藤を抱えながら生きてきました。しかし、バドミントンを始めたことによって、「自分は体が小さいのを武器にして、それを見てもらう。そのことで元気を与えたり、小さくても頑張っているということを伝えたい」と思えるようになりました。自分の障害に対して恥ずかしいと思わず、低身長なんだと胸を張って言える、そんな自分を見てもらえたらいいなと思っています。

東京2020大会に向けての意気込みをお願いします。

 今は8月にスイスで行われる世界選手権(TOTAL BWF WORLD PARA-BADMINTON CHAMPIONSHIPS)に向けて全力を注いでいます。東京2020大会の出場権を獲得するための一番大きな山です。そこを乗り越えたら、東京2020大会も見えてきます。一生に一度のチャンスをなんとか掴み取って、自分の生まれた東京で、メダル獲得を目指して頑張ります!