HOMEパラスポーツインタビュー青木 洋子さん

パラスポーツインタビュー詳細

青木 洋子さん(日本ブラインドマラソン協会(JBMA)所属)

青木洋子さんの写真

プロフィール

名 前

青木 洋子(あおき ようこ)

所 属

日本ブラインドマラソン協会(JBMA)

日本ブラインドマラソン協会(JBMA)ホームページ URL:http://jbma.or.jp/

2017年の「北海道マラソン」完走時のスナップ。
同大会ではゲストに招かれて板有森裕子さんと再会。「強化指定選手になれてよかったね」と声をかけてもらったという

運動嫌いだった私がいつしか東京パラリンピックを目指すアスリートとして走り続ける

ランニングを始めたきっかけは?

 9年前に、知人からランニングのサークルを紹介されて始めたのがキッカケです。目が見えなくなる以前も運動はまったくしていなかったのですが、伴走してくれる人がいるということで、気軽な気持ちで参加しました。当初は月に2、3km走るくらいでしたが、4カ月後、勧められて荒川の「タートルマラソン国際大会」に出場しました。最初は10㎞の部門で出場し、3回目くらいでハーフマラソン部門を完走しました。

 自分が思っていたよりも走れたので「練習量を増やせばもっと走れるかも」という気持ちが芽生え、週に2回ほど走るようになりました。それでも、なかなかフルマラソンに挑戦する踏ん切りがつきませんでした。走り始めて5年目くらいで出場した「つくばマラソン」で5時間かかりましたが、初めてフルマラソンを完走しました。ゴール直後はヘロヘロになり、「二度と走らない」と思ったのですが、帰宅する途中には「もう一度挑戦したい」と思っていました(笑)。その半年後には2度目のフルマラソンを完走。以降はどんどん欲が出てきて、ついに「名古屋ウィメンズマラソン」で4時間を切ることができました。それをキッカケに、より本腰を入れて走るようになりました。ランニングを始める前までは、自分は運動なんてできないと思っていたのに、わからないものですよね(笑)。

いわゆる「サブフォー」を達成したのですね。それからさらに記録を伸ばしていったのですか?

 走り込みを強化して3時間40分を切る様になり、さらに好記録を狙っていたのですが、その頃に貧血気味になって記録が伸びなくなりました。3時間半を出せば強化指定選手の資格が取れるので目標にしていたのに……。でも、女子の視覚障害選手で3時間半を出せる選手がほとんどいなかったので、強化指定選手の設定タイムが3時間45分に下がり、2016年に強化指定選手になることができました。同年11月の「大田原マラソン」では、ついに3時間24分の自己新記録を出すことができました。12月には「防府読売マラソン」で3時間20分、2017年2月の「別府大分毎日マラソン」では3時間18分と自己記録を更新することができました。

*サブフォー:フルマラソンで4時間を切ってゴールすること

現在のベストタイムは?

 2017年12月に出場した「防府読売マラソン」で出した3時間15分です。同大会は女子の視覚障害選手の日本選手権を兼ねて行われ、私は2位でした。1位になったのは、リオのパラリンピックで銀メダルを獲った道下美里選手です。彼女の記録は2時間56分14秒というそれまでの世界記録を2分以上も更新する驚異的な世界新記録でした。

青木さんがここまで記録を伸ばせた要因は?

 私たちは単独で走ることができないので、伴走してくれる仲間の存在です。練習量を増やすために、朝出勤前にもしばしば走っているのですが、伴走してくれる人がいることは本当にありがたいです。指定選手になってから強化合宿にも参加して、練習内容を見てくれる人もいるので、それも力を伸ばせた要因ですが、ここまで来ることができたのは、やはり日々の練習の積み重ねの成果と一緒に走ってくれる仲間の存在ですね。とにかく、私たちは本当の大勢の人たちに支えられて走っています。私はいつもチームで走っているという感覚なのです。彼らのおかげで、記録も伸びたし、強くなれたのだと思っています。

 あと、有森裕子(株式会社RIGHTS.)さんと対談をさせていただいたことがあり、当時は強化指定選手を目指して走っていたので、その目標を話したら「チャンスは自分の手でつかまないと逃げていく」という言葉をいただき、それも励みになりました。

現在、練習で苦労しているのはどんなことでしょうか?

 やはり練習場所と伴走者の問題ですね。伴走者も10人以上いますが、まだまだ足りません。彼らだって体調が悪くなって走れなくなることもあれば、急な仕事が入ることもありますから、ひとりでも多くの方にサポートいただければと考えています。ただ、練習場所については、北区の味の素ナショナルトレーニングセンターの施設を我々パラリンピアンも使えるようになったことがありがたいですね。

最後に今後の目標は?

 もちろん、2020年の東京パラリンピックに出場して活躍することです。道下選手がサブスリーを達成している以上、そのレベルに近い記録で走れなければ、メダル獲得は見えてきません。一気には無理なので、まずは3時間10分を目指して練習を積み上げたいと思っています。そのためには、フォームを改善する必要もあるし、これまであまり取り組んでこなかった、体幹を鍛えるトレーニングなどを導入することも考えています。

 私が本格的に競技に取り組んだタイミングで、たまたま地元の東京でパラリンピックがあるのですから、有森さんの言葉の通り、目の前のこのチャンスを自分の手でつかむしかないと思っています。運動が大の苦手だった昔の私を知る友人たちは、今、こうして走っている私を見て目を丸くしていますよ(笑)。それでも、そんな友人たちも心から応援してくれていますから、頑張りたいですね。