特集インドネシア2018アジアパラ競技大会

インドネシア2018アジアパラ競技大会

 4年に一度のアジア地域の障害者スポーツの祭典「アジアパラ競技大会」が10月6日から8日間の日程で、インドネシア・ジャカルタで開かれた。43の国・地域から約3000人の選手が参加。日本選手団は過去最多となる304人を派遣し、チェスを除く17競技に出場した。パラリンピック競技においては、東京2020パラリンピックの試金石と位置付けられた今大会、日本は計198個(金45個、銀70個、銅83個)のメダルを獲得し、前回の仁川大会の143個を大きく上回った。



期待の若手選手が大舞台で最高のパフォーマンス

 今大会の日本代表の選考基準には、東京2020パラリンピックで「入賞の可能性がある選手」が盛り込まれ、陸上競技や水泳を中心に、10代や20代前半の選手が多く代表入りし、頂点を目指した。本格的に競技がスタートした7日には、水泳の女子200m自由形(知的障害S14)で15歳の北野安美紗(きたのあみさ)が日本選手団第1号となる金メダルを獲得。


 陸上競技でも、女子400m(視覚障害T13)で21歳の佐々木真菜(ささきまな)が、また男子100m(切断などT64)では競技を始めて1年の期待の新人・井谷俊介(いたにしゅんすけ)が混戦を制して優勝するなど、大舞台で結果を残した。


 大前千代子(おおまえちよこ)団長は、「メダル数が前回を上回り、結果には満足している。東京2020パラリンピック前の最後の総合大会であり、次世代の選手にとっては、良い刺激となった」と振り返った。なお、メダル総数・金メダル獲得数ともに、トップは中国(金172個、銀88個、銅59個、計319個)だった。


開会式で旗手の前川楓(まえがわかえで)を先頭に入場行進する日本選手団

陸上競技男子100m決勝を11秒75の好タイムで金メダルを獲得した井谷俊介(いたにしゅんすけ)

車いすテニスは国枝、上地が東京2020パラリンピック出場権を獲得

 車いすテニスでは、男子、女子、クァードと、すべてのクラスで日本人が表彰台に。シングルスで3連覇を達成した男子の国枝慎吾(くにえだしんご)と初優勝の女子の上地結衣(かみじゆい)には、東京2020パラリンピックの出場権が与えられ、国枝は「準備がしやすくなるので獲得できてよかった。グランドスラムを目標にしながら、東京に向けて頑張っていきたい」と話した。クァードでは、東京アスリート認定選手である菅野浩二(すげのこうじ)がシングルスで銀メダル、諸石光照(もろいしみつてる)と組んだダブルスで金メダルを獲得した。


 自転車競技でも日本の4選手全員がメダルを獲得した。片脚切断のサイクリスト・川本翔大(かわもとしょうた)はエントリーした3種目すべてでメダルを獲得。また、今夏にロード世界選手権で優勝している野口佳子(のぐちけいこ)は、女子3㎞個人追い抜きで金メダルを、大会最終日には女子500mタイムトライアル(運動機能障害C1—3)で42秒430の日本新記録をマークして銀メダルを獲得した。野口は2016年にロードレース中の事故で高次脳機能障害を負い、その後パラサイクリングに転向した。進化を遂げる47歳は、「東京2020パラリンピックでの金メダル獲得」を目標に据えており、「2020年に向けて課題を見つけ、さらなる努力を重ねていく」と言葉に力を込めた。


車いすテニスの国枝慎吾(くにえだしんご)は、見事に単複2冠を達成した

女子3㎞個人追い抜きで金メダル、女子500mタイムトライアルで銀メダルを獲得した自転車競技の野口佳子(のぐちけいこ)

中国席巻、インドネシア躍進! アジアのなかの日本の現在地は

 アジア勢が世界を席巻するバドミントン、パワーリフティング、ボッチャなどは、まさに世界一を争うハイレベルな戦いが繰り広げられた。東京2020パラリンピックで正式競技となる注目のバドミントンでは、地元インドネシア勢が大活躍。立位男子団体戦で優勝したのを皮切りに、計15個のメダルを獲得。バドミントンが国技だけあって、最終日はチケットが完売になるほどの人気だった。


 日本勢は女子シングルス(上肢障害SU5)で世界ランク1位の鈴木亜弥子(すずきあやこ)が準優勝。さらに、東京アスリート認定選手である車いすWH2の山崎悠麻(やまざきゆま)は3種目に出場し、シングルスと長島理(ながしまおさむ)と組んだミックスダブルス(WH1-WH2)で銅メダルを獲得するなど奮闘を見せた。


 中国はこのバドミントンで金メダル7個を含む16個のメダルを獲得。また、下肢障害者によるベンチプレスであるパワーリフティングでは、男女それぞれ体重別で10階級あるうち、男子は3階級、女子は実に7階級を制するなど、圧倒的な力を印象付けた。


 ボッチャのチーム(脳性まひBC1-BC2)では、日本は王者タイと準決勝で対戦。序盤は互角の展開となったが、次第にリードを広げられ敗戦。日本代表はリオパラリンピック決勝、今年8月の世界選手権決勝でもタイに敗れており、雪辱は果たせなかった。


 ゴールボール女子代表は、初戦で宿敵の中国を破った勢いを維持し、決勝で再び中国と対戦。ここでも5-3で競り勝ち、目標に掲げていた「全勝で金メダルを獲得」を達成した。攻守で活躍したキャプテンの天摩由貴(てんまゆき)は、「2020年に向けて、一つひとつ課題を克服しながら、世界の頂点へのステップを上がっていきたい」と話し、さらなる進化を誓っていた。


 シッティングバレーボールは女子代表が銅メダルを獲得。アベック優勝を狙った車いすバスケットボールは男女とも2位に終わった。決勝では男子はイランに2点差で敗れ、女子は強豪・中国に終始リードを許す展開となった。女子のキャプテン・藤井郁美(ふじいいくみ)は「東京へ向けて下を向いている時間はない。選手一同、日々の練習を大切に精進していきたい」と話し、前を向いた。


バドミントンの山崎悠麻(やまざきゆま)(写真手前)と長島理(ながしまおさむ)はペアを組んだミックスダブルスで銅メダルを獲得

ゴールボール女子代表のキャプテンとしてチームを引っ張った天摩由貴(てんまゆき)(写真手前)

アジアパラならではの競技も注目

 アジアパラ競技大会では、東京2020パラリンピック種目にはないローンボウルズやテンピンボウリングといった競技も実施されている。ローンボウルズは1968年テルアビブ大会から90年代までパラリンピック競技だった。「ボウル」と呼ばれる偏心球を芝生の上で転がし、目標球のジャックにどれだけ近づけられるかを競うもの。重心が一方に偏っているため、スピードが遅くなるとカーブを描く。その曲がり具合と芝の状態を計算しながら投球する高い技術と戦略が必要で、今大会はインドネシアや韓国が実力を発揮した。日本は前回の仁川大会で銅メダルを獲得した植松博至(うえまつひろし)ら3人が出場したが、メダル獲得はならなかった。


 テンピンボウリングは、障害ごとに大きく分けて3カテゴリーあり、日本からは視覚障害の選手が出場。金メダル獲得はならなかったものの、個人戦とチーム戦で計4個のメダルを獲得した。3人一組で4ゲームを行い、その合計得点を競うチーム戦では、森寛樹(もりかんじゅ)・小林和明(こばやしかずあき)・清杉政敏(きよすぎまさとし)の日本チームが、韓国、チャイニーズタイペイ、マレーシアと熾烈なトップ争いを演じ、2位に入った。今大会は、健常者ボウリングの世界チャンピオンである今井双葉(いまいふたば)、全日本ユースナショナルチームメンバーの德久恵大(とくひさけいた)がコーチとして帯同しており、森は「我々には本当にぜいたくなコーチ陣。たくさんの支えがあって修正でき、頑張ることができた」と感謝の言葉を口にしていた。


 地元のインドネシアは陸上競技やチェス、バドミントンなどでメダルを量産。大会開催が競技力向上につながり、金メダル数で5位と前回大会から大躍進した。2年後にパラリンピック開催を控える日本も成果を出せるか、期待がかかる。(取材・文/MA SPORTS、撮影/植原義晴)


躍動したテンピンボウリング日本代表メンバー。銀メダル3個、銅メダル1個を獲得

笑顔で写真におさまる車いすテニス会場のボランティアたち

陸上競技の会場では、地元・インドネシアの人々が大きな声援を送っていた