特集都立学校活用促進モデル事業「スポーツ体験教室」

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 障害のある人や障害者スポーツ競技団体等が、身近な地域でスポーツ活動をできるよう、都立特別支援学校の体育館やグラウンド等を貸し出す「都立学校活用促進モデル事業」(主催/東京都、事業実施/公益財団法人東京都スポーツ文化事業団)。2016年9月に5校でスタートし、昨年度は10校、今年度は15校まで増えており、その活動の幅も広がっている。障害の有無や年齢、性別等にかかわらず誰でも気軽に参加できるスポーツ体験教室も好評で、都立特別支援学校が障害者スポーツの拠点のひとつになりつつある。



「ボッチャ」への高い関心が垣間見えた体験教室

 体験教室での実施種目は、車いすテニスやバドミントン、ふうせんバレー、フライングディスクなどのスポーツやレクリエーション等、バラエティに富んでいる。15校それぞれで内容が異なり、たとえば江戸川区の鹿本学園では、昨年9月から今年1月にかけて5回にわたり「ボッチャ体験教室」を実施した。5回連続参加する「皆勤賞」の人がいるほど人気で、取材した1月12日は23人(障害者13人、健常者10人)が参加。そこに12人のボランティアも加わり、体験教室は賑やかに始まった。


 白いジャックボール(目標球)に、赤・青のボールを投げたり、転がしたり、他のボールに当てたりして、いかに近づけるかを競うボッチャ。まずは、ボールの感覚や的に正確に寄せる感覚を養うため、八角的を使って投球練習。参加者は、東京ボッチャ協会の講師による「寄せる時は逆手で、弾くときは下から投げる」といった説明を、真剣な表情で受けて投球に挑戦した。


5回目の体験教室にも大勢が参加した

まずは八角的を使って投球練習

 3組に分かれた実践練習はさらに盛り上がり、ジャックボールに寄せるとチームメートから歓声や拍手が沸き起こる場面も。家族4人で参加した宮澤浩(みやざわひろし)さんは、「今日で3回目。障害がある長男は、声援を受けると自分で手を動かすんです。私たち家族を他の参加者さんたちが知ってくれているのも有難いですし、毎回楽しいです。来年もぜひ参加したいです」と笑顔を見せた。


 また、昨年度はこのボッチャ体験教室の参加者が、事業終了後にボッチャチームを新たに作ったといい、地域における“障害者スポーツ活動の推進”が形になりつつある。


「ランプ」を使っての投球に挑戦する宮澤(みやざわ)さん一家

狙ったところにボールが転がり、喜ぶ参加者

ボランティアのかかわり方にも“進化”が

 今年度は、新たな取り組みとして、ボランティアのためのサポートメンバーがスタッフに加わった。スタッフは、ボランティアを競技アシスタントやレフェリー体験に誘導。彼らが参加者のサポートだけでなく、さらに充実した活動ができるよう背中を押した。


メジャーで計測するミリ単位の攻防もボッチャの魅力だ

「どっちが近い⁉」真剣に結果を見つめる参加者たち

 ボランティア“皆勤賞”の片倉賀代子(かたくらかよこ)さんは、5回目にして初めてレフェリーを体験。「教えてもらいながら楽しくできました」と振り返る。また、「ボッチャも他のパラスポーツも、まだあまり知られていないと感じるので、地元でこういう機会があるのはとても貴重だと思います。ぜひ知り合いに教えてあげたい」と話していた。今回の取材では、片倉さんらボランティアと参加者が、和気あいあいと一緒に競技に取り組む姿が印象的だった。


ボランティアの片倉賀代子(かたくらかよこ)さんは初めて審判を体験し「楽しかった」と語る

ジャックボールに向かって転がるボールを見守る仲間たち

 ボッチャの指導を行った東京ボッチャ協会の佐藤勝枝(さとうかつえ)副会長は、「ボッチャはユニバーサルスポーツ。みなさんが楽しんでくれたのが何よりうれしい」と喜ぶ。また、重度の障害がある子は学校と家の往復になりがちであることに触れ、「放課後に彼らが活動できるボッチャのチームが増えれば、外に出る貴重な機会になるし、もしかしたら将来はパラリンピック選手になるという夢につながるかもしれない。東京パラリンピックが開催される2020年以降も競技ができる環境が身近にあることが大切だと強く感じているので、この事業の意味はとても大きいと思っています」と語る。


 佐藤さんの言葉や参加者の生き生きとした表情から、この取り組みの無限の可能性を感じることができた。新年度の活動に注目していきたい。


(取材・文/MA SPORTS、撮影/植原義晴)


今後の取組み等について語ってくれた東京ボッチャ協会の佐藤(さとう)さん

笑顔で集合写真におさまる参加者たち