特集障害者スポーツコンシェルジュ事業「企業×障害者スポーツ競技団体等の交流会2018」

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 東京都障害者スポーツ協会では、障害者スポーツへの支援を検討している企業等と、支援を必要としている競技団体等をつなぐ「障害者スポーツコンシェルジュ事業」を2016年から行っている。その一環として、2017年度に引き続き2回目となる「企業×障害者スポーツ競技団体等の交流会2018」が、昨年12月19日に東京国際フォーラムで開催され、企業等32社・団体と、障害者スポーツ競技団体等39団体が参加。自由交流と企業・競技団体によるプレゼンテーションを通して、情報交換を行った。



未来につながるマッチングを目指す

 東京2020パラリンピック競技大会開催まで2年を切り、企業の障害者スポーツに対する注目が高まっている。その一方で、多くの競技団体が練習場所の確保難や運営力・資金不足といった悩みを抱えているという実態がある。本事業は、その双方が情報交換する機会を設け、ネットワークの構築につなげることを狙いとしている。


 企画調整課の大越克行(おおこしかつゆき)課長によると、2017年度の第1回交流会は、「ボランティア」「協賛」「施設貸出」というように、目的別にグループを分けて実施したが、より幅広くマッチングを図れるよう、今年度は「企業・競技団体によるプレゼンテーション」と「自由交流」の二つの柱を設け、参加者が自由に往来できるよう配慮。自由交流では双方が主催者に提出する「交流希望シート」をもとにマッチングする方式を採用し、希望に応える工夫をした。


 大越(おおこし)課長は「東京2020パラリンピック開催に向け、社員のボランティア活動等、企業の動きは活発化していくことが予想されます。ただ、そこで終わってはいけません。東京2020大会以降も障害者スポーツを根付かせるために、未来を見据えたマッチングを心掛け、今後も情報提供をしていくつもりです」と話している。


交流会開催の意義や狙いについて話す大越課長

自由交流では出席者同士が積極的に話をする場面が見られた

【実践報告】企業としての“課題”から生まれた支援活動

 自由交流と並行して行われたプレゼンテーションでは、3つの企業・競技団体が登壇した。そのうち、警備会社の株式会社ゼンコーの取組みについて紹介する。


企業や競技団体によるプレゼンテーション会場にも多くの聴衆が詰めかけた

 同社と障害者スポーツとの出会いは、2013年に行われた「スポーツ祭・東京2013」。会場の東京辰巳国際水泳場や国立代々木競技場体育館等で警備業務に就いた際に、障害者の安全確保業務にあたっては女性社員の細かな視点や気づきが発揮されるという新たな発見があったという。この経験から、同社の人財(※)育成においては、この点の強化も必要であると判断し、スポーツに興味を持った女性社員を確保するために、女子硬式野球チーム「BEAMS」を結成。障害者野球チーム「ブルーサンダース」とも合同練習等で交流を深めている。(詳細はこちら


 昨年、東京都障害者スポーツ協会の団体正会員になったことを機に、障害者スポーツに関する勉強会を実施。大会やイベントなどで必要とされるスキルが具体的に見えてくると、次第に社員のボランティア活動への関心が高まり、本格的にCSR活動として取り入れ始めた。参加した社員は、こうした活動経験によって適応力や広い視野、豊かな感性が醸成されるようになり、徐々に本業の警備業務に好影響を与え始めているという。


 海野弘幸(うみのひろゆき)代表取締役社長は、「本業の業務を推進していくうえで、『人財育成』が大きな課題でした。当社の場合は、その解決策を障害者スポーツと関わりを持つことで見つけることができました」と振り返る。また、「ボランティア活動はもちろん強制ではありません」と前置きしたうえで、「参加した社員は笑顔が増えたと感じますし、経験談を共有することで、『自分たちのためにもなるんだ』というように、少しずつ理解の輪が広がっています。企業として取り組むのであれば、WIN-WINの関係を重視しながら、ひとつの芯となるテーマを持ってCSR活動に臨むことが大事なのではないでしょうか」と、障害者スポーツの支援を検討する企業に対してコメントを寄せてくれた。


(※)「人財」…人は財産と考え、ZENKOGROUPでは「財」の字を使用しております。


株式会社ゼンコーの海野社長によるプレゼンテーション

「障害者スポーツと関わることで、課題だった“人財育成”の解決策を見つけられた」と話す海野社長

企業と競技団体、参加者それぞれの声

 今年度は昨年を上回る187人が参加。企業、競技団体それぞれの出席者に話を聞いた。


<企業>
◆堀江車輌電装株式会社 中村(なかむら)様
 「日本知的障がい者サッカー連盟のスポンサードをはじめ、車いすソフトボールの大会協賛、選手の雇用等に取り組んでいます。昨年はプレゼンテーション登壇企業として参加しましたが、携わっていてもまだ知らない競技があることがわかりました。とくに、重度障害者のスポーツはまだまだ知られていないと感じたので、こうした機会にもっとたくさんの競技団体が参加してくれることを期待しています」


◆住友不動産エスフォルタ株式会社 阿部(あべ)様・深井(ふかい)様・滝沢(たきざわ)様
 「指定管理者制度による公共施設の指定管理者として、スポーツ施設の運営に取り組んでいるため、イベントや体験会等で障害者スポーツに関わっています。ただ、競技団体や担当者の方と直接交流できる機会は実は多くはありません。今回参加して初めて『ペガーボール』というニュースポーツがあることを知りましたし、競技団体それぞれの想いや悩みに触れることができました。来年もぜひ参加したいと思いました」


堀江車輌電装株式会社
中村様

住友不動産エスフォルタ株式会社
阿部様・深井様・滝沢様

<競技団体>
◆一般社団法人日本障がい者立位テニス協会 高野(たかの)選手・柴谷(しばたに)様
 「身体障害者が車いすを使わず、立位で行う競技性の高いスポーツです。昨年12月のTAP US Openでは日本の高野健一(たかのけんいち)選手が優勝するなど、世界で日本人選手が活躍しており、競技の魅力を伝えるべく、昨年協会を立ち上げました。様々な競技団体や企業と触れ合えるこの交流会が、障害者のテニスにも『立位』があることを一人でも多くの方に知っていただく機会になればと願い、臨みました」


◆東京都ローリングバレーボール連盟 犬伏(いぬぶし)様
 「ローリングバレーボールは、座った姿勢や膝をついた姿勢でボールを床の上を転がして得点を競うチーム競技です。この競技は重度障害者も健常者も一緒にプレーできることが魅力ですが、知名度が高くありません。多くの方に競技を知ってもらい、大会の運営協力だけでなく、プレーヤーとして一緒に戦ってもらいたい……。今回の交流会は、その気持ちを伝える貴重な機会になりました」


東京都ローリングバレーボール連盟
犬伏様

一般社団法人日本障がい者立位テニス協会
高野選手・柴谷様

交流会は支援定着のヒントが満載

 企業による障害者スポーツ支援は、技術や製品の開発、金銭的支援、CSR活動、アスリート雇用など、そのアプローチも内容も様々だ。今回の交流会では、企業がその活動を定着させ、継続性を持たせるためには、組織的・体系的に取り組み、社員の理解と共感を得ることが大事だということがわかった。


 株式会社ゼンコーの実践報告でも触れたように、その理解と共感は、単にボランティアをするという一方通行の思いやりで得るものではなく、携わる一人ひとりの感性を養い、磨いていくことで得られるものだ。海野社長は「恩着せがましい活動はしない」とも話しており、その言葉が支援活動の本質を象徴していると感じる。


 障害者スポーツ支援のさらなる機運醸成のためにも、こうした経験を社外に発信し、他社と連携を取っていくという“次なるステップ”にも期待したい。


(取材・文/MA SPORTS、撮影/植原義晴)