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パラスポーツインタビュー詳細

森下 友紀さん(リオ2016パラリンピック競技大会:水泳競技出場)

森下友紀さんの写真

プロフィール

名 前

森下 友紀(もりした ゆうき)

出身地

千葉県

所 属

ダンロップスポーツクラブ北松戸

クラス

S9/ SB9/SM9

障 害

先天性による左前腕より欠損

〇水泳競技の東京アスリート認定選手であり、東京2020大会への出場が有力視されている森下友紀選手にインタビューを行いました。森下選手は1996年千葉県生まれの現在大学4年生。最近めでたく就職先が決まった彼女の、リオ2016大会での思い出や東京2020大会に向けた想いなどをお聞きしました。

水泳に出会ったきっかけを教えてください。

 水泳を始めたのは5歳の頃で、当時はお風呂でシャワーを嫌がるくらい水を怖がっていました。その様子を見かねた母が小学校のプールの授業の前に、水に慣れるべく近くのスイミングスクールの短期教室に入れたのが始まりです。当時の記憶はあまり残ってないのですが、短期教室の後も水泳を続けたいと親に言ったらしく、そのままスイミングスクールに通い続けました。スイミングスクールは日時が決まってなくて、好きな時間に来て泳いでいい形式だったので空いている時間を見つけては泳ぎに行っていました。

 小学5年生の頃通っていたスイミングスクールに選手育成コースができたのをきっかけに競技としての水泳を始めました。

森下さんの思う水泳の好きなところはどこですか。

 自分でもどうしてこんなにはまっているかわからないですけど、大会などで誰かと競い合って泳ぐのが好きです。練習はみんなそれぞれに泳ぎ続けるイメージが強いけど、試合ではみんなそろって「よーいどん」で一斉に泳ぎ始めてどのくらいのタイムが出るのか、そのように競い合えるのが楽しくて好きです。健常者の中での大会ではなかなか勝てなかったけど、誰かと競えるのが楽しかったです。

水泳をやめたいと思ったことはありますか?

 あまりないです。競技を始めてからは練習メニューもハードになったのですが、大会に出たいという気持ちが強かったので、そのためにやらなければならない練習メニューはこなさないと、という気持ちでした。

練習メニューや1週間のスケジュールを教えてください。

 大学や東京スイミングセンター、東京辰巳国際水泳場や所属のダンロップスポーツクラブのプールなど様々なところで泳いでいます。またフィジカルを鍛えるためにナショナルトレーニングセンターで陸上トレーニングもしています。月曜から土曜まで、平日は大学に通いながらトレーニングをして、日曜日はオフの日で休んでいます。

 練習では苦手としているキックの練習と今まであまり意識してこなかった左手を鍛えることを課題としています。今までのキックは弱く、水面から低い位置で蹴っていたので水の抵抗が強く推進力が生まれませんでした。水の抵抗を最小限に抑え、推進力を最大限に生み出す理想のキックを体で覚えられるように模索しながら練習をしています。また左手の使い方に着目し、義手を使いながら普段は使用しないけれども泳ぐときに必要となる左半身の筋肉を意識して鍛える練習をしています。今まで左手はただ回しているだけだったので、推進力に繋がるようにしたいです。

オフの日はどんなことをされていますか。

 オフの日は、友達と遊んだり、撮りだめたテレビドラマを見たり、自宅で休んでいたり、地元の松戸の街へぶらっと出かけたり、といった感じです。音楽が好きなので音楽ライブや野外フェスに行くこともあります。好きなバンドやアーティストはたくさんいますがクリープハイプ、高橋優をよく聴いています。

リオ2016パラリンピック競技大会の思い出を教えてください。

 全体的に楽しかったです。レース前の招集所にいるときは緊張して帰りたいという気持ちもあったけど、入場した時の観客の歓声と盛り上がりに感動しました。同じレースにブラジルの選手がいたからなのですが、私もやれるんじゃないかと思えてきました。泳いでいる最中はやっぱり楽しかったです。

 100mバタフライでは日本新記録を出すことは出来たけど、決勝にはいくことができませんでした。決勝レースの補欠として招集所に控えていて、そこから決勝に行く選手たちを見送ったときは自分が行けないことが悔しかったです。東京2020大会ではこんな悔しい思いはしたくないと思いました。

 個人競技での悔しさはあったものの、その後リレー競技が控えていたので落ち込んでいる暇もなく気持ちを切り替えました。リレーでは入賞することができ、みんなと一緒になってメンバーとして目標を達成できたことがうれしかったです。バタフライの時の悔しい気持ちはリレー競技での達成感で払しょくされました。だから全体を通してリオ2016大会は楽しかったという思いです。

 またリオ2016大会の前後には心境の変化があって、緊張を前向きにとらえられるようになりました。以前はあまり大会などで緊張を感じることはなかったのですが、今は色々な大会で緊張を感じます。けれども、緊張するのは人にできないことを自分がやろうとしているからだと思うようになり、緊張感を楽しめるようになりました。緊張しているからこそいい結果が出せると今では思っています。

目標の選手やライバルはいますか?

 ライバルは一ノ瀬メイ選手(リオ2016パラリンピック競技大会女子水泳日本代表)です。同い年で障害も手が逆というだけで同じクラスなのでライバルとして意識しています。目標兼憧れの選手はスペインのサライ・ガスコン選手(リオ2016パラリンピック競技大会女子水泳100mバタフライ(S9)、100m自由形(S9)銀メダリスト)。サライ・ガスコン選手は体幹が強く、キックも強くて泳ぎ方がとてもきれいです。リオ2016大会では一緒に泳ぐ機会があり、間近で彼女を見てかっこいいと思いました。

直近で出場される大会を教えてください。

 9月22日(土)~24日(月・祝)に横浜国際プールで行われる2018ジャパンパラ水泳競技大会に出場します。東京2020大会に向けてまずはこの大会でしっかりと結果を残せるように頑張りたいです。

東京2020大会に向けて意気込みをお願いします。

 リオ2016大会から今日まであっという間な感じがして、東京2020大会もすぐに来てしまうような気がします。コーチが変わるなどの環境の変化の中で、練習内容を自身で組み立てることが多くなり、自分のことを客観的に見つめなおすことが多くなりました。高校生までは与えられた練習メニューをこなすだけだったのが、自分で課題を見つけて取り組むようになり、競技結果に責任を感じるようになりました。リオ2016大会の時は学生でしたが東京2020大会では社会人になり、より自身の競技結果に責任を持たなくてはいけなくなってくると思います。今の練習の中でそうした責任を意識するようになり、結果に責任を持つ覚悟もできてきています。

 東京2020大会ではリオ2016大会で味わった悔しい思いをしたくないです。自分の力で決勝に行き、メダル争いに絡めるようになりたいです。また世界で認識されるレベルの選手になれるよう頑張ります。