みんなの声石井直美さん

みんなの声

石井 直美さん(東京アスリート認定選手:馬術)

~プロフィール~

名前:石井 直美(いしい なおみ)

出身地:東京都

所属:株式会社サンセイランディック/東京都障害者乗馬協会

クラス:グレードⅤ

障害:右上腕欠損

年齢:54歳(2019年5月現在)

平成30年度の東京アスリート認定選手であり、2019年一般社団法人日本障がい者乗馬協会(JRAD)の育成指定選手でもある馬術の石井直美選手にインタビューを行いました。馬術との出会いから競技の見どころ、来年の東京2020パラリンピック競技大会に向けての意気込みなどをお聞きしました。

―馬術を始めたきっかけは?

 子どもの頃から動物が好きで、ずっと乗馬への憧れはありました。でも、10歳の時に業務用の脱水機で遊んでいて事故に遭い、右腕に障害を負ってからは、無理だろうと思い込んでいました。結婚して子育ても一段落し、自分の時間を持てるようになった頃、「障害者でも馬に乗れるらしいよ」と夫に言われ、心が動きました。すぐに千葉県の乗馬クラブへ体験乗馬に行き、44歳で馬術を始めました。

―はじめから「競技」を意識していたのでしょうか?

 最初は、趣味として2週間に1回くらいのペースでやっていました。競技をスタートしたのは2年目からです。目標があると上達が早いということでクラブ内の競技会で、進級を目指しているうちに、どんどんのめり込んでいきました。ちょうどその頃、インターネットでパラリンピックに出場した選手がいることを知り、もしかしたら私も出られるチャンスがあるかもしれないという気持ちが芽生え、趣味から徐々に競技の方向へと移っていきました。

―初めて出場した大会について教えてください。

 2012年に兵庫県で行われた「第20回全国障がい者馬術大会」に出場しました。参加することに意義があると思って臨みましたが、最初から最後まできちんと課題をこなすのに精一杯でした。終わってみると、思っていたよりも点数が良かったので、うれしかったことを覚えています。この大会には借りた馬で出場したのですが、「競技会に慣れたベテランな馬」だったので怖いと思うこともなく無事に終わりました。障害者を乗せるにあたって、安全というのが一番大切なのですが、競技会場で環境が変わっても落ち着いた馬でした。初めて騎乗した馬としては、非常に安全な馬を貸してもらったと思います。

―ふだんの練習はどのように行っていますか?

 今、乗っている「ゴールドティア号」がいる茨城県の乗馬クラブで、週に4~5日練習しています。何時間も乗ると馬が疲れてしまうので1日45分が基本です。コーチが「下乗り」をして馬に教えたあと私が乗って、競技会で行う課題ごとに分けながら練習します。1回やったからもうできるというわけではないので、馬に動きを習得させるために日を変えて何度も繰り返し伝え続けます。馬術はとても根気が必要な競技です。第一に馬の健康を考えて、馬が飽きたり、嫌になったりしてしまわないように折り合いを見ながらレッスンしています。練習が終わると、馬のケアや馬具(ほとんどが革製品)のお手入れも欠かさず行います。乗馬時間は短いですが、1回のレッスンに3~4時間くらい費やしています。

―練習のないお休みの日は、どのように過ごしていますか?

 ショッピングや、映画を観て気分転換をしています。でも、どうしても馬のことを考えてしまうことが多いですね。

―競技のパートナーである馬とは、どのようにコミュニケーションをとっていますか?

 騎乗していてよくできた時には、き甲(馬の首と背中の間にある骨の膨らみ)をなでてあげます。反対に、馬が動かない時には、足で馬の体を軽く圧迫させて「違う」ということを教えます。いい事と悪い事の区別をつけることで、コミュニケーションがとりやすくなります。練習が終わったあとには、ニンジンをあげたり、リンゴやバナナをあげたり、甘いものをご褒美としてあげたりもします。愛馬のゴールドティア号は角砂糖が大好きで、ゆっくり味わいながら食べます。大きな口で美味しそうに食べる姿はとても微笑ましいです。スキンシップのひとつとして、そういったコミュニケーションやお手入れも、できる限りやるようにしています。

―石井選手が思う、馬術の魅力は?

 障害のある人が工夫をして、馬とコンタクトを取りながら乗るというところです。基本的に全く同じ障害の選手はいないので、選手それぞれが障害に合わせて工夫した特殊馬具を使用しています。例えば、鞭を脚代わりに使ったり、座るときに体が落ちてしまう選手は鞍に工夫をしています。私の場合は、手綱の引き方を工夫しています。通常は、2本の手綱を両手で1本ずつ持つのが基本なのですが、右腕に障害があるので、2本の手綱をバーで橋のようにつなげています。バーを持つことで左右の手綱を引いています。そういった工夫がこの競技ならではの見どころのひとつだと思いますので、ぜひ注目してみてください。

―目標とする、もしくは尊敬する選手はいらっしゃいますか?

 パラリンピックで、11個の金メダルを含む14個のメダルを獲得している、イギリスのリー・ピアソン選手です。以前、兵庫県の三木ホースランドパークでレッスンを受ける機会があったのですが、難病のため歩行困難でありながら簡単そうに馬を動かしていました。人間的にも非常に優しい方で、彼からたくさんのことを学びました。

―現在の所属先について教えてください。

 JOC(日本オリンピック委員会)の就職支援制度「アスナビ」を利用して、株式会社サンセイランディックに入社しました。毎月、報告書を提出して、月に1回、出社しています。社員のみなさんには、メールマガジンを発行して近況報告をしています。その中で、馬にまつわる話(ことわざや慣用句など)を毎回書いているのですが、出社して社員の方に会うと「ことわざおもしろいよ」と声をかけてくれます。入社して一番うれしいのは、競技会の時に応援に来てくれることです。試合会場が遠くて、競技が始まるのも朝早いのですが、みなさんが応援に来てくれると、とても励みになります。頑張らなければいけないというプレッシャーにもつながりますが、しっかり結果を出すことで恩返ししたいと思っています。

―出場を予定している大会について教えてください。

 2019年6月7日(金)~9日(日)に静岡県の御殿場市馬術・スポーツセンターで行われる「CPEDI3★ Gotemba2019 Summer 兼 JRAD 国内競技会PartⅡ」という国際公認大会に出場します。グレード別の国内ランキングでは1位ですが、総合順位でいうと、まだ5位以内に入っていません。まずは、そこに入ることが今年の目標です。

―来年の東京2020パラリンピック競技大会に向けて、意気込みをお願いします。

 バランストレーニングを練習に取り入れるなど、今年は新しいことにもチャレンジしています。ゴールドティア号と私、人馬ともに高め合って実力を上げているところです。今年を東京2020パラリンピック競技大会に向けた「勝負の年」と位置づけ、惜しむことなく人馬一体となって全力で進んでいきます!

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